「胎児 後編」

2021/11/20 | スタッフブログ
「胎児 中編」胎児はまだ「人」ではない。からの続きになります。
 
 
胎児はまだ「人(権利能力者)」ではないので権利を取得したり、義務を負担することは原則できないということになります。
 
まあ当然といえば当然なのかもしれません。お腹の中にいるのだから売買契約をしたり、お金を借りたり、土地を所有させたりしてもあまり意味がないようにも思えます。
 
民法3条1項で権利義務の主体すなわち「人」になるのは出生からでした。
 
ここでも1つ問題があります。「出生」って厳密にいつなのという問題です。言い換えるといつから「人」なのという問題です。
 
法律のおもしろいところでもありますが、興味のない人間からするといらいらするところかもしれません。たまに法律学者は暇なのと思ってしまいます。
 
たくさん説がありますが、ここでは2つ
 
「全部露出説」と「一部露出説」です。
 
読んで字のごとく
「全部露出説」胎児が母体から全部露出した時点で「人」
「一部露出説」胎児が母体から一部露出した時点で「人」
 
民法の通説は「全部露出説」です。なので出生届や戸籍の記載とは無関係に全部露出した時点で「人」として扱われます。
 
例えば全部露出した時点でおじいちゃんが孫にお小遣いをあげれば孫のお金です。
一部露出した時点でおじいちゃんが孫にお小遣いをあげても実質親のお金になりそうです。
 
ちなみに刑法では「一部露出説」です。
 
ここまでで、胎児は「人(権利能力者)」ではなく出生(全部露出)によって「人(権利能力者)」になるということになりました。
 
これも、法律あるあるなのかもしれませんが、以上は原則です。例外があります。
 
相続
遺贈
損害賠償
 
この3つは例外です。
 
相続については886条1項で
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。という規定がおかれています。
 
遺贈と損害賠償についても相続と同様に既に生まれたものとみなされます。
 
具体的には、例えば胎児の段階で父親が事故で亡くなった場合。原則を貫けば胎児は「人」ではないので父親の財産を相続できずに他の相続人に帰属しそうですが出生の時期のわずかな差で相続できたりできなかったりするのは不憫です。
そこで例外として相続は胎児の場合、既に生まれたものとみなして父親の財産を相続することが出来ます。
 
損害賠償も同様に父親が誰かに殺害されてしまった場合。胎児なのでその加害者に損害賠償請求できないのではあまりに理不尽です。
そこで既に生まれたものとみなして損害賠償請求が可能にしています。
 
相続の場合には、誰が相続人かによって相続できる人、相続できる額が大きく変わってくるのでお腹の中に胎児がいる場合には注意が必要です。
 
 
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